アイドルと生演奏ミュージシャンの需要についての考察

 

先日町を歩いていたら、とあるイベントの特設ステージでアイドルのパフォーマンスを目にする機会が二日連続でありました。生でアイドルのステージを観たことはあまりなかったので、新鮮でした。

最近はご当地アイドルというのも人気があって、大手事務所に所属するのではなく、地方の事務所、民間企業、商工会議所、NPO等が運営しているそうです。また、フリーランスで活動するアイドルも増えてきているみたいで、インディーズアイドル、地下アイドル等様々な活動を展開しているようです。その辺はあまり詳しくないので細かい分類はできませんが、とにかくアイドルの裾野が広がってきているのは間違いなさそうです。

なぜなら、そこには需要があるからです。メジャーでないアイドルは、メディアへの露出も少なく、地方のライブハウスやイベントへの出演が主な活動になります。昨今はSNSの普及に伴い、メディアに取り上げられなくても存在を発信でき、認知されるようになってきています。こういったアイドル達の集客力は大きくなりつつあり、イベントの主催者にとってもアイドルにとってもファンにとってもWIN-WINになっているケースが増えてきているようです。

僕も街中でのライブイベントやヤマハ音楽教室のデモ演奏をやる機会があります。そこで、ライブイベントにおけるミュージシャンの生演奏とアイドルのパフォーマンスについて考察してみました。

どちらも音響機材(PAシステム)は必要になりますが、生演奏の場合、楽器、機材(アンプ等)が必要になります。もともと設置してあるライブハウスであれば問題ありませんが、野外や特設ステージ等ではそれらを用意する手間や料金が発生します。ミュージシャンが持ち込みでやるケースもありますが、どうしても転換に時間がかかってしまいます。電気を必要とする楽器の場合、機材のトラブルもありえますし、野外のステージでは雨天の場合の機材の保全対策もしておかなければなりません。

アイドルの場合、人数分のマイクだけで事足ります。アイドルによってはワイヤレスであったりヘッドセットであったりする必要があると思いますが、ドラムセットやキーボードをレンタル、設置することに比べるとはるかに安上がりでしょう。あとは音源を再生できれば環境は整うかと思われます。トラブルも電気楽器バンドよりもはるかに少ないでしょう。

次にギャラですが、これはミュージシャンにせよアイドルにせよピンキリです。ですが、メジャーアイドルでない場合、かなり安いと聞いています。交通費もでないことも多いそうです。

しかし、アイドルはほとんどの場合会場内で物販をさせてもらっています。アイドルの物販はミュージシャンのそれよりかなりの売り上げが見込めます。それは、グッズよりも握手、チェキです。ミュージシャンのファンはCDやTシャツは一度買ったらそれで終わりですが、アイドルの場合、握手会でアイドルと直接お話ができたり、その日の記念のチェキは、「前に買ったから今回はいいわ。」というものではありません。何度も何度も繰り返す事でアイドルに顔と名前を覚えてもらい、距離を縮めていく行為にファンはお金を払い続けるのです。なので、アイドルとしてはギャラが安くとも物販で収入が見込めるのでイベントに出演するメリットがあります。

バブルの時代は生演奏の仕事が今よりもはるかに多かったと聞きます。アマチュアミュージシャンでも週末の演奏活動で結構なお小遣いが稼げたし、プロの演奏家でも仕事量、単価が今と比べ物にならなかったそうです。また、当時はアイドルといえば大手事務所に所属してテレビに出る人たちのことであって、現在のような「会いに行けるアイドル」なんて概念がありませんでした。アイドルが小規模のイベントに進出していけるのは、新しい市場が開拓された今の時代だからこそでしょう。

主催者としてイベントに生演奏ミュージシャンを呼ぶか、アイドルを呼ぶかという時に、予算、機材トラブルや転換に伴うタイムロスを考慮するならば、アイドルに軍配が上がることになりそうです。

以上のような考察になりましたが、もちろんイベントの内容によってアイドルは適さない、生演奏が求められるケースがあることは言うまでもありません。様々な選択肢の中で皆がいいパフォーマンスをしていければいいなと思いますが、パイの奪い合いという考えでいえばやはり僕は生演奏ミュージシャンなので、僕たちの需要が増えることを期待しつつ演奏活動を頑張っていきたいと思います。